太陽光と海水から水素を生成する酸化チタン光触媒を開発

光触媒技術のさらなる展開に期待:水素生成の新たな可能性

東京都立産業技術研究センターが発表した、酸化チタン光触媒を用いた水素生成技術は、太陽光と海水を活用し、クリーンエネルギーの新たな可能性を切り開いています。この技術は、Ti3+の安定的な固定化とエタノール添加により、従来技術よりも大幅な効率向上が確認されました。今後の展開として、さらなる性能向上や実用化が期待され、持続可能なエネルギー分野での貢献が注目されています。

【記事元 - 太陽光と海水からグリーン水素を発生する非貴金属系の光触媒を開発!~酸化チタン光触媒へのTi3+の安定的導入と高表面積化を両立させる新技術~】

https://www.iri-tokyo.jp/site/joho/press.html

太陽光と海水から水素を生成する酸化チタン光触媒を開発


湿式ビーズミル粉砕過程のイメージ 出所:東京都立産業技術研究センター


Ti3+欠損導入酸化チタンの走査電子顕微鏡写真 出所:東京都立産業技術研究センター


処理前後および照射光の種類による水素生成速度の比較 出所:東京都立産業技術研究センター

人工海水添加におけるエタノールの影響 出所:東京都立産業技術研究センター
「出典: [地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター]」

ポイント

    • ・Ti3+の安定化:エタノール溶媒を用いた酸化チタンの粉砕と凝集により、酸素欠損を持つTi3+を安定的に格子内に固定。これにより、光照射時の反応効率が大幅に向上しました。
    • ・光照射による水素生成の大幅改善:紫外光と可視光の同時照射により、開始後30分で水素生成速度が安定し、元の酸化チタンと比較して16倍の生成速度を実現。
    • ・エタノール添加の効果:人工海水中に極微量のエタノール(0.005vol%)を加えることで、紫外光-可視光照射時の水素生成がさらに5倍に安定。エタノールは塩素イオンの犠牲試薬として機能し、反応を助ける役割を果たしているとされています。

     

    今回の技術により、紫外光だけでなく可視光を利用することで効率的な水素生成が可能となったことは、持続可能なエネルギー源としての水素利用の可能性を大きく広げるものです。今後の研究では、さらに反応場の拡大や光触媒の活性向上を目指し、太陽光を活用した実用的な水素生成システムの確立が期待されています。
    この技術のさらなる発展は、エネルギー効率のさらなる向上や応用分野の拡大、低コストかつ効率的な水素エネルギーの供給につながり、脱炭素社会への貢献が大いに期待されます。

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